『動物たちのバベル』上演記録(2018年11月)
2018年11月9日(金)くにたち市民芸術小ホールにて、多和田葉子の『動物たちのバベル』を上演した。くにたち市民芸術小ホールは、国立出身の多和田葉子にフォーカスした企画を年に1度実施しており、今回はその3回目となる。
過去の実施事業はコチラ→多和田葉子複数の私 vol.1 Vol.2
多和田さんの出身地である国立市民に向けての企画ということだったので、それならば、多和田さんのことばにどっぷり浸かってほしい、と思い、国立市民の皆さんを公募して制作・上演を行う企画を提案した。
作:多和田葉子 演出・美術:川口智子 照明:横原由祐
衣裳:角田美和 舞台監督:横山弘之 振付協力:辻田暁
出演:末松律人、武田あやめ、武田怜実、加藤礼奈、渋沢瑶、熊田香南、横川敬史、中嶋祥子、一色亮介、佐藤満、堀満祐子、棚田真理子、森口京子、畠山栄子、松井千奈美、前川悦子、高橋博子、久保田正美
制作:くにたち市民芸術小ホール
【川口智子 2018年11月11日HPより】
くにたち市民芸術小ホール『動物たちのバベル』上演終了いたしました。ご来場いただきましたみなさま、ありがとうございました。
多和田葉子さんの著作がとても好きで、大学生のころから読んでいた。最初のきっかけをよく覚えていないけれど、翻訳学の延長なのか、中島先生の紹介だったか。ともかく好きだったのは『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』。
自らを、さまざまな言語の海を泳ぐ魚にたとえ、「意味というものから解放された言語を求めて」旅する多和田さん。
ことばとの距離感。半ば突き放されている(ゆらいでいる)ことばの居方はとても魅力的で、翻訳的で、演劇的で、漠然といつか上演したいなぁとは思っていました。
昨年度、学芸大の自主ゼミで『夜ヒカル鶴の仮面』の試演をやってみたところ、さらりとクールな戯曲のことばと構造の下に、実に生き生きとした人間のカラダ(この作品では、死体がずっと舞台上にあるのだけれど)と、そのカラダをなかば乗っ取るような形での動物たち、舞台上に飾られた7つの動物の仮面が、ある呪術的な、神秘的な、そしてとてもコミカルなまたこれ非常に翻訳的で演劇的な戯曲であることにびっくりして、きちんとした上演をしてみたい、と思っていたのでした。
その直後に、くにたち芸術小ホールから、「多和田葉子さんの戯曲を上演しませんか?」とのお誘い。飛びつきました。
戯曲は、『動物たちのバベル』を選び、プレWSを経て18人の参加者が決まりました。19歳から70歳までの、豊かなチーム。
1幕~3幕の3グループ、それぞれ10回のワークショップはを40日間に詰め込むというのは、なかなか体力のいる作業で、しかもそれぞれのチームでまったく違う稽古になる(当たり前なんだけど!)もんだから、始めてから「大変な方法をとってしまった!」と気づきました。
でも、本当に楽しかったなぁ!
多和田さんのことばの「ゆらぎ」に身をまかせ、そこから見えてくる世界の不思議なねじれ・隙間・切れ目を見つける。氷山がひっくり返る時間、人間にはとらえることのできない大きな時間の流れを知る(かもしれない)動物たちの気づき。
1人もかけることなく40日間のお稽古期間を経て上演を迎えることができ、たくさんの方々に見ていただくことができて、本当に幸せな企画でした!
くにたち市民芸術小ホールと多和田葉子さんの企画は来年以降も続きます。また、ご一緒できますように!
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